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構音障害が疑われたら・・・
<構音障害と診断するために 1>
1.構音障害の「診断」について
「診断」という用語を、医師以外の者が用いることは、適切ではありません。
ここでは、「この子に構音障害があると言っていいかな」、「この子のこの状態を構音障害と言っていいかな」と判断することを「診断」と言うことにします。
「指導の必要があるかどうかを判断することを『診断』と言う」とする考え方もあります。
しかし、明らかに構音障害があると考えられる場合に対しても、指導の必要があるかどうかを判断することは必要です。従って、指導の必要の有無を判断することに先立って、先ず、構音障害と言ってよいかどうかを判断することが必要であるため、構音障害の存在の有無を判断することを「診断」と言うことにします。
音の誤りが認められること=構音障害ではありません。
また、構音障害がある=指導が必要である、それをすぐに開始する必要があるということでもありません。
2.音の誤りが認められても、必ずしも構音障害とは言えない
= 構音障害であると診断されても、必ずしも指導が必要であるとは言えない理由
●構音も発達するという視点から
音の誤りは、構音の発達の過程でも現れます。したがって、構音発達に遅れを生じる原因となるような障害があると、音の獲得の完成期を過ぎる年齢となっても、音に誤りが認められることがあります。
●聴こえにくさの有無との関係から
日本語と言わず何語と言わず、ことばや音は全て、人が発したものを何度も何度も繰り返し聴き、また、自分でも発してそれを聴くことによって獲得されます。
ところが聴覚に障害があると、人が発したことばや音も、自分が発したことばや音も歪みなくクリアに聴き取ることが困難です。モデルとなる音の聴取や自分の発した音のフィードバックが難しいと、正しい音を身に着け発することが出来ません。
●情緒の安定の状態や障害との関係から
ことばはコミュニケーションの道具ですが、伝え手が伝えようと意図することは、必ずしもことばで語られたことだけではありません。
ことばにも、「ことばを発する」いうことにも、ことばで表された具体的内容以外の様々なメッセージを込めることが出来るのです。
(子どもが、母親の関心を惹き付けようとしたり、自分の身近にい続けて欲しいと願ったりして、「〜ってどうして?」と繰り返すなどというはそのよい例です。)
例えば、あるとき、それまで正しく言えていたはずの音を急に誤って発するようになる場合があります。
ある子の下に、つい最近、弟が誕生しました。すると、大好きな母親だけでなく家族や親戚達がその新しい家族にばかり関心を寄せるようになりました。実際、弟は育児に手がかかります。それまで一人っ子でいて両親の愛情を一身に独占してきたその子にとっては危機的な状況です。が、どうすることも出来ません。
このような時、その状況を何とかしよう、つまり自分にも関心を惹き付けようと、上の子は様々な手を打とうとします。それが無意識のうちになされることもあります。夜尿などの赤ちゃん返り(退行)です。それが話し言葉にも現れることがあります。すると、この間までちゃんと言えていたはずのことばが言えず「ワンワン」のような幼児語となったり、「オチャカナ」のような音の誤りを生じたりするのです。
●属する集団との関係から
ことばや音は、同じ音韻体系を持つ者の集団内のまさに「共通言語」ですから、例えば同じ時代の同じ地域社会の同じ世代などといった、音韻体系を共通とする者の集団の中で通じる音が、その集団にとっての正しい音ということになります。
ある人がその人と同じ言語を話す者の集団とは異なる集団に入った時、その人が発する音は、時によって道具の域を超えて注意を奪われる対象になります。
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