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「先取り」が良くないわけは?

 ※これまで他の音に誤っていたり、歪んでいたりした音が、正しく発音出来るようになると、とても嬉しいですね。嬉しさのあまり、つい意味のある言葉(その最も小さな単位は単語です)の中で試したり練習したりしてみたくなるのは当然のことです。
 けれども、それ一つの音(単音)でやっと発音出来るようになった音が、意味のある言葉の中でよどみなく正しく発音出来るようになるためには、そのための練習が必要です。
 
 同じ文字で書き表すことが出来、また全く同じ音のように聞こえる音は、他の音との連なりの中では、その音の前や後につく音の作られ方の影響を受けて、省力化のために無意識にその音の作られる場所(構音点)が微妙に変わり、いつも同じ一定の場所で発音されているわけではありません。

 この無意識のうちに行われる構音点の微調整によって、発音をする者も、それを聞く者も、よどみなく自然に言うことや、聞こえた言葉を違和感なく受け止めることが出来るのです。

 ことばの教室では、単音やその連続で上手に発音出来るようになった音を、様々な音との組み合わせの中で、その中の位置も様々に変えて繰り返し練習します。

 このようにして、自然に聞こえる音が、意識しなくても無理なくスムーズに発音出来るようにするのです。

 この意味の無い音の繋がりの中での発音が、どのような音との組合せでも、どのような位置でも十分出来るようになってから、はじめて意味のある言葉の中での練習に入ります。

 この練習を怠ると、「ことばの教室での練習では上手に発音出来るのに、普段の話し言葉の中ではいつまでたってもちっとも誤りが治らず、なかなか正しい発音が定着しない」ということになりがちです。

 つまり、ことばの教室のように、注意深く気をつけて発音する場面では正しく発音出来ても、ことばの教室外のような注意をしにくい状況では、ついうっかりそれまで使い慣れてきた楽なやり方で話してしまうということになるわけです。
  
単音で発音出来るようになった音を、お家ですぐに
意味のある言葉の中で練習しないことが望ましいもう一つの理由:

 発せられた言葉は、もともと言葉を発した話し手のメッセージを伝えるための道具であり、その中に含まれる音はそのパーツで、そのものに意味はありません。
 聞き手は、発せられた1音1音の正しさに着目して話し手の言葉を聞いているわけではなく、聞きながら言葉の意味を考えメッセージを受け取っています。

 聞き手が知っている意味のある言葉を聞いたとき、聞き手は耳では音を聞きながら、頭の中では言葉の意味を受け止めているので、もし仮に言葉の中で用いられている音が正確でなくても、その音を、知っている言葉の中に用いられている音として聞いてしまいます。

 意味のある言葉の中では、本当は正しく発音されていない音であっても、正しさを受け止めるアンテナが低くなりそれらしく聞こえてしまうのです。

 したがって、発音された音の正しさが求められる練習では、音の正しさを厳しく吟味することが出来ない限り、アンテナが低くなりがちな状況下での練習を避けることが賢明です。