アクセシビリティ

文字の大きさ
表示色の変更

検索システム

教育相談情報提供システムから検索

操作条件を入力すると目的のページを見ることができます
 

全国相談機関情報から検索

教育相談の実態調査のデータを元に地域、年齢、障害種別、相談内容から検索できます。

 
 
ケース会議や協議の進め方

 ケース会議を行うと、事例の提出者が資料を整えたり、レジュメを印刷したり、ビデオの準備をすることが大変だと思われがちです。また、ケース会議に参加しても、実際には終結した事例であったり成功した事例であったりするため、なかなか自分が担当している事例に関連しにくく、その事例だけに止まってしまいがちです。そのため意欲的に会議に参加できず、研修として内容が発展していかないことがあるのではないでしょうか。 


1.インシデントプロセス法とは



 このような問題の解決策として考えられたのが、インシデントプロセス法です。インシデントプロセス法は、マサチュ-セッツ工科大学のピコ-ズ教授が提唱したもので、次のような特徴にまとめられます。 

(1) 参加者一人一人に問題解決の当事者の立場で考えられるので主体的、積極的な研修がで
きる。 
(2) 実際の教育相談活動の場において発生した問題を参加者全員で共有することができ、解決方法がその後の参加者の実践に役立つ。 
(3) 事例提供の資料が短くてすむので、準備等事例提供者の負担が少ない。 
(4) 質問が事例そのものに関してなので、提供者の対応等への批判になりにくく、負担感が少ない。


  インシデントとは「小さな出来事」のことを指し、参加者には、はじめに発端となる小さな出来事(インシデント)しか提示されません。参加者は事例提供者か司会者に質問することで、その出来事の背景や、原因となる情報を収集し、それをもとに問題を分析して、対策を考えるという事例研究法(ケーススタディ)の一種です。 インシデントプロセス法で目指す能力は、問題発見・問題分析・意志決定の能力を培うところにあるといわれています。


2.インシデントプロセス法の手順



 インシデントプロセス法は次のようなステップで進められていきます。 

(1) 第1ステップ(インシデントの提示)

  •  事例提供者が、インシデントを発表し、参加者は内容を把握する。 

(2) 第2ステップ(事実・情報の収集)

  •  参加者は、事例提供者に質問し、自分なりに事例を組み立てながら、問題点に関係があると思える事実を収集する。このステップは一番重要なステップで、事例提供者や司会者は参加者に次の点に留意することを強調します。
  •  ケースの全容は参加の質問によって解明していく。 事例提供者、司会者はケースの関連情報を把握している。 事例提供者、司会者は質問されたことのみに答える。
  •  同じ質問には答えない。 参加者は他の参加者の質問に常に注目しておく。
  •  事例提供者、司会者はわからないことは「わからない」と答える。 参加者は質問によって得た事実や情報をもとに整理していく。 

(3) 第3ステップ(解決するべき問題点は何かを明確にする)

  •  第1ステップのインシデントと第2ステップで集めた事実を総合して、自分なりの事例の全体像を作り、問題点を探り整理していく。

(4)第4ステップ(解決策の立案とその理由を固める)

 
  •  参加者は対応とその理由について話し合い、自分ならこう対応するという具体的な案となぜそうするかという理由や根拠についてまとめる。 
  •  また、事例提供者は実際の対応とその後の事例の経過について発表する。 

(5)第5ステップ(このケースから何を学んだかを考える)

  •  事例全体を振り返り、この事例から、また参加者との協議の中から、何を学びとったかを考える。
  •  現状では、教育センターの相談担当者がコンサルタントになる場合は、都道府県レベルでの対応が多く、全体的な事項について把握している現状があります。また、特別支援学校の担当者がコンサルタントになる場合は、身近な地域の情報を把握し、近隣の小学校や中学校へ支援をしている場合が多いといえます。
  •  しかし、地域によって、教育センターの学校コンサルテーションと特別支援学校のセンター的機能を利用した学校コンサルテーションが同様に展開されている地域もあります。実際の学校コンサルテーションを展開していくとき、それぞれのコンサルタントが連携協力し、または役割分担を適切に行って学校コンサルテーションをすすめていく必要があります。 


3.インシデントプロセス法実施上の留意点



 このケーススタディは、事例提供者が何かインシデント(指導上の問題、解決したい行動、担任している児童のことなど)を提案すると、参加者はそのインシデント解決のために英知をしぼって考え、事例提供者に解決策を提案するといった方法で、問題解決能力を開発していこうとする方法です。これを進めるのにルールがありますので、以下にまとめておきます。

(1) 事例提供者を非難したり、努力不足を指摘することは絶対禁止。
(2) 事例提供者は事実だけをありのままに述べる。事例提供者の考えや想いを述べる必要はない。
(3) 参加者は事実に関する質問のみする。抽象的な質問については、司会者が具体的な形で質問しなおすように促す。
(4) タイムスケジュールを作り厳守する。
(5) インシデントに対する解決方法は、紙に文章化してまとめる。


4.コンサルタントが関わるケース会議



 インシデントプロセス法による会議の進め方について、紹介しました。最後にケース会議や協議を進めていく際にコンサルタントが気をつけることを述べておきます。 

○出会いと関係づくり 

 学校は外部の人間が入り込むことについて、いつでも歓迎と言うわけではありません。子どもの指導をめぐる困難については、多くの場合、内部で解決したいと考える傾向が強いと思われます。コンサルタントが入り込むときこのような学校事情を考慮し、まず担当者から信頼され、相談を持ちかけていこうという気持ちになってもらう必要があります。最初の段階でコンサルタントは自分の専門を明らかにし、どういった支援が可能かについてできる限り明確に示しておくことが大切です。
コンサルテーションの依頼が保護者から来る場合と担任から来る場合、校長など管理職から来る場合では、そのコンサルテーションの関係作りや内容に違いがあります。この違いに十分に留意しておく必要があります。 
外部の批判者ではなく、「校内の実践を支援する」存在として、受け入れてもらえるよう自己紹介にも工夫や配慮が必要です。どんな立場の人と会う場合でも出会いを大切し、その人の校内での立場やコンサルテーションにおける位置づけついても確認するようにしてください。そして、考えの違う方々とも一緒に課題を解決していくのだという構えを大事にしてほしいと思います。
コンサルテーションは間接的な支援ではありますが、子どもとの関係や教師との関係については、直接支援をするときと同じ様に細心の注意を払う必要があります。教師(コンサルティ)がコンサルタントをどのような存在として受け止めているか、たえず自己吟味し、必要に応じて関係を維持・発展できるように手立て(支援)を工夫することもあります。
 

○課題の整理と明確化 


 ケース会議や協議会を進めていく際に、コンサルタントには、子どもをめぐる困った状況や心配な状況に対して、何が問題であるのかを整理し、その課題に対して具体的に何から始めていけるかを提案していくことが求められます。
 それも、実際に行動を起こすのは、コンサルタントではなく、コンサルティですから、コンサルティが取り組める提案でなければ意味がありません。多くの場合、コンサルティが持っている見方を少し変えてもらうことによって、事態を新たに見直すことが可能になり、そこから解決策が見つかります。
 コンサルテーションでは、このように新たな視点や考え方を提示することでコンサルティの実践力を高めてもらうことが大切です。コンサルタントの知識や技量などでは対応できないことがはっきりしているときには、そのことをはっきりと告げ、外部の資源の活用を提案することも大切です。


○経過のフォローと手立ての検討 

 1回か2回の話し合いで、そのときに提案された考えや話し合いの中で生み出された解決方法を実施してみて、問題が解決するというような短期的なコンサルテーションもありあます。問題が複雑になる場合や予防的な対策が必要な場合は、継続的な関係が必要になります。そのときには、経過を丁寧にフォローし、例え頻回に訪問できなくても、連絡を取り合って状況の推移を確認する必要があります。チームを相手にする時には、チームの中で意見の食い違いが全体の進行を阻害しないように、たとえ立場や考え方の違いがあっても、風通しの良い話し合いの場を持ち続けることが重要になります。
 

○資源の活用・他機関との連携 

 子どもの課題が明確になり、どういった人たちがどのような役割のもとでかかわっていくかの見通しが立っても、そのような資源がない場合、校内にある資源を活用したり、学校外部の資源を活用したりする必要性が生じてきます。コンサルタントが積極的に資源活用を推進し、特に外部の資源について情報提供をすることが求められるでしょう。