学校コンサルテーションを進める中で、コンサルタントはその地域の相談及び支援体制について、コンサルティから情報提供を求められることがよくあります。
例えば、コンサルタントは、コンサルティから「その地域にはどのような医療機関があるのか」「子どもの居住地近くの進路先にはどのような機関があるのか」等の質問です。
これらの質問に対して、コンサルタントが適切な情報提供を行うためには、コンサルタント自身が地域の相談及び支援体制を含めた地域リソース(資源)についての知識を深めておく必要があります。
では、地域における相談及び支援体制についての情報を収集し、それを活用するためにはどうしたらよいでしょうか?
地域のリソースに関する情報を収集し知識を深めるためには、以下のような方法があります。
1)地域資源マップの作成
情報収集のための一つの方法として、地域の利用可能なリソースの配置を明記したリソースマップの作成があげられます。地域リソースマップを作成することによって、学校を核とした医療・福祉・教育・労働へと続く連携のありようについて全体的に捉えることができます。また、地域の中にあるリソースをあらかじめ把握しておくことによって、いざというときにどこと連携や協力を行えばよいかを視覚的に把握でき、それを活用することも可能です。このようにリソースマップを作成することによって、コンサルティへの支援のみならず、クライエントである障害のある子どもの暮らしと保護者への支援等にも役立てることができます。
図1は、A市におけるリソースマップの例です。このようなリソースマップをもとに子どもの暮らしに密着したネットワークを構築することができます。こうしたネットワークがどのように密接な繋がりになっているかについて、学校を中心にその連携の実行面を線の太さで表現しておきます。機関間の強い連携が可能な場合は太く、これから取り組むべき機関との間は波線や細い線で表記しておくと、連携全体の関係がわかりやすくなります。
地域のリソースマップを作成した後は、実際にそれらを活用して、地域のネットワーク作りをすすめることが大切です。地域のリソースを結びつけることによって、様々な人や機関、組織との連携や協力を通してコンサルティの課題解決を支援することができます。
実際に、自分たちの居住している地域のネットワークづくりをすすめるときには次の2種類の情報を収集しておく必要があります。
(1) 身近な生活圏域(市町村レベル、一定規模の地域レベル)での地域リソースについての情報収集。
(2) 比較的広域なレベル(都道府県レベル)での地域リソースについての情報収集。
(1) 身近な生活圏域(市町村レベル、一定規模の地域レベル)での情報収集
このレベルは、身近な生活圏域にあたり、私たちの生活とも直に関係しています。この中で、「どのような医療機関があるのか。」、「進路先にはどのようなものがあるか。」などを把握し、場合によっては、この範囲でのさまざまなネットワーク作りをすすめることによって、障害のある人が地域の中で生活することを支援することにもつながります。このことは、共生社会やノーマライゼーション社会の実現に向けての一歩になります。
(2) 比較的広域なレベル(都道府県レベル)での地域リソースについての情報収集
身近な生活圏域では解決し得ない事項について、比較的広域な地域を見つめ直してみることによって解決策につなげることができる場合もあります。「県の福祉施策はどのようになっているのか。」や「町にはいない専門家はどこにいるのか。」等の質問に対し、より広い地域の情報を収集することでそれらの課題を解決することができます。また、このレベルでのネットワーク作りをすすめることによって、他の地域との情報交換につなげることも可能です。
このように、身近な地域から少し広域なレベルの情報収集とネットワーク作りをすすめることによってコンサルタントの情報提供の幅を拡げることができ、教師(コンサルティ)や子ども(クライエント)の支援へと結びつけることも可能になります。(図2)

また、連携や協力をする機関は、支援を必要とする人の発達や成長の時期、年齢によっても異なってきます。例えば、幼児期には、幼稚園や保育所と健診機関、療育機関等がネットワークをつくることもありますし、学校卒業後は職場や福祉施設等の進路先を含めたネットワークづくりが必要になってきます。
これらをまとめると、その時々に応じた横の連携である横断的なネットワークと、その人の成長発達に応じた縦断的ネットワークの両方を作っていく必要があるといえます。
さらに、これらのネットワーク作りを進めるにあたっては、障害のある人、一人ひとりの支援に必要なツールである個別の支援計画も大きく関係しています。実際の支援には、ツールとしての「個別の支援計画」の活用を考慮した、適切なネットワーク作りをコンサルタントが支援していきましょう。
そして、昨今の特別支援教育の動向に応じて、都道府県には教育委員会をはじめ、医療や福祉関係部局を含めた部局横断型の委員会としての「広域特別支援連携協議会」、また、一定規模の地域ごとには「特別支援連携協議会」を設置しているところもあります。ネットワーク作りには、必要に応じてこれらの新しい組織を活用していくことも大切だといえます。
2.地域における相談及び支援体制の活用
学校コンサルテーションの実施において、そのコンサルタントには、教育センターの相談担当者や、特別支援学校のセンター的機能を利用した特別支援教育コーディネーターがなる場合が多いと言えます。
現状では、教育センターの相談担当者がコンサルタントになる場合は、都道府県レベルでの対応が多く、全体的な事項について把握している現状があります。また、特別支援学校の担当者がコンサルタントになる場合は、身近な地域の情報を把握し、近隣の小学校や中学校へ支援をしている場合が多いといえます。
しかし、地域によって、教育センターの学校コンサルテーションと特別支援学校のセンター的機能を利用した学校コンサルテーションが同様に展開されている地域もあります。実際の学校コンサルテーションを展開していくとき、それぞれのコンサルタントが連携協力し、または役割分担を適切に行って学校コンサルテーションをすすめていく必要があります。
以下に教育センターと特別支援学校のセンター的機能が連携協力して、学校コンサルテーションを実施しているところの例を挙げます。
例えば、神奈川県では、「教育相談コーディネータ養成講座」を受講した教育相談コーディネータが特別支援学校と連携協力しながら、地域における学校コンサルテーションをすすめています。
また、北海道が実施しているパートナー事業では、教育相談において教育センター所員と特別支援学校(以下「パートナー校」という)の教育相談担当者が協力して相談を行っています。そして教育相談パートナーの教育相談技能の向上と、パートナー校の地域におけるセンター的機能の充実を図ることを目的として地域における支援体制を構築しているところもあります。
このように、地方によっては、教育センターの教育相談部門と特別支援学校のセンター的機能の役割を整理し、それぞれの地域における学校コンサルテーションを実施している例もあります。
いずれにしても学校コンサルテーションを進める上で大切なことは、最終的にクライエントが満足のいく充実した支援を受けることができたかにかかっています。支援を実施するにあたって、このように地域にあるさまざまなリソースを大いに活用しながら学校コンサルテーションを展開していくことが大切です。