コンサルテーションとは、異なる専門性をもつ複数の者が、援助対象である問題状況について検討し、よりよい援助の在り方について話し合うプロセスをいいます。自らの専門性に基づいて他の専門家を援助する者を「コンサルタント」、そして援助を受けるものを「コンサルティ」と呼んでいます。
基本的には、二人の専門家の間でコンサルタントがコンサルティに対して、コンサルティのかかえているクライアント(援助やサービスなどを直接的に必要としている人)に関係した特定の問題を、コンサルティの仕事の中でより効果的に解決できるように援助する取組のことです。
このガイドブックでは、「コンサルテーションとは、困難な問題に直面している相談者に、その問題や課題を評価・整理し、解決に向けて相談者の力量を引き出すための支援を行う相談」と押さえて話をすすめたいと考えています。
1.コンサルタントとコンサルティの関係
コンサルテーションは、コンサルタントもコンサルティもそれぞれ専門家であると捉えます。学校コンサルテーションでは、コンサルティは、教育実践や教育管理の専門家であると考えます。
この専門家同士の関係は、コンサルティ側の自発的な意思に基づいて始まります。そして、コンサルタントとコンサルティ双方が相談関係を築くことについて了解し合うことが必要です。
年齢や経験からコンサルタントが上に位置づけられる傾向がありますが、お互いに専門家として協働し、よりよい支援を創り上げていくという点を大切にしたいものです。
2.学校コンサルテーションの対象
コンサルテーションが誰によって始められるかは(発動)は様々です。子ども自身の場合、保護者の場合、子どもを担任する先生の場合が考えられます。学級へのコンサルテーションでは、対象がこのようになることが多いようです。
学校などへのコンサルテーションでは、対象が学年主任や特別支援教育コーディネーター、校長や教頭などの管理職の場合があります。
もう少し大きな枠組みで教育委員会などが対象となる場合もあります。さらに大きな枠組みで関係機関や地域社会が対象となる場合もあるでしょう。
このようにコンサルテーションの対象は、さまざまなレベルが考えられ、それぞれの対象に応じた内容が考えられます。
3.学校コンサルテーションの内容
学校コンサルテーションの対象は様々ですが、いずれの場合にも、子どもや担任等が抱えている問題を中心に、問題点を整理し、評価し、具体的な対応策を検討しながら問題解決を図ることが最も一般的です。
このことを基本にして、専門的な知識を身につけることができるようにマネジメントしたり、担当者が抱えている不安に対して、他の取り組みなども紹介しながら安心感を与えたり、課題に対する捉え方に関して新たな見方を提案したり、組織・管理上の問題について改善策を検討したり、外部の有効な資源へ繋いだりする場合があります。
学校コンサルテーションの内容としては、(1)知識の提供、(2)精神的な支え、(3)新しい視点の提示、(4)ネットワーキングの促進、などがあります。
4.学校コンサルテーションの性格
学校コンサルテーションには、二つの性格があります。 一つは、現に展開している状況について、できる限り迅速に対応する必要がある場合です。そのまま経過を観察するだけの時間的な余裕がない場合や、コンサルティやクライアントの状態や問題をできるだけ早く回復させる必要がある場合などです。このような場合には、すぐさま何らかの対応を始めなければなりません。このようなコンサルテーションは危機介入と呼ばれています。その多くは、数回のコンサルテーションによって問題解決へ導かれることが期待されます。
もう一つは、今後の状態変化を予測しながら、予防的に対応を考えていく場合です。
例えば、相談者である担任が教師集団の中で孤立しないように、職場の人間関係づくりに配慮したり、課題がある子どもについて、担当者だけでなく学校全体でその子どもの理解を進めたりすることなどです。このようにコンサルテーションが予防的な働きを担うことがあります。普段から連携をとり、継続的な関係のコンサルテーションを行うことで、このような予防的な働きが機能すると考えられます。
5.コンサルテーションの定義の概要(Brown,Pryzwansky,&Schulte,1995)
Brownらは、コンサルテーションの定義の概要を以下のように示しており、この定義の概要もコンサルテーションを理解するための助けになるものと考えますので、参考にしてください。
- コンサルタントとコンサルティとの間で問題や課題を解決する過程のこと
- コンサルタントとコンサルティとの間において様々なレベルを用いたコンサルテーションによって進められる協働作業のこと
- コンサルタントとコンサルティには、双方において様々な領域における専門家や非専門 家が含まれている
- コンサルタントは、コンサルティ自身がコンサルテーションの技能を習得できるように直接的な支援を行う
- コンサルタントは、コンサルティを通じて、クライアントへ間接的な援助やサービスを提供することから「コンサルタント、コンサルティ、クライアント」との間に三者関係が存在すること。