*教育相談は根気や忍耐の必要な長期間のワークとなることが少なくありません。その究極的な目標は「自己解決」の援助です。
*この「自己解決能力を高める」という長いワークの中で初回相談の目指すところは、大きく分けて<4つの目標>を達成することです。
<具体的な話し方の例>
1. 信頼関係を形成するために・・・
担当者から介入する際には、「Yes?No?」「A?B?」の選択形式は使用せず、相談者が自由に話せるようオープンな形式でききます。
(オープンでない例)
「その時、お母さんが思って(感じて)いたのは○○ですか?それとも△△ですか?」
「○○のように感じたんですよね?違いますか?」
(オープンな例)
「その時、お母さんはどのように思って(感じて)いたのですか?」
「そのことについて、もう少し詳しくお話しして下さいませんか?」
2.問題を明確化していくために・・・
「今までどのような相談を受けてこられましたか?」
→ アリの場合:「そこでの相談はどうでしたか?」
→ ナシの場合:「何か理由や事情があるのですか?」
「『教育相談』に対してどんなイメージを持っていますか?」
「ここの教育相談は、どうやってお知りになったのですか? (どなたかからの紹介ですか?)」
「本当は教育相談に来ることには抵抗があったのでしょうか?」
(逆説的なのですが、「言い難い気持ちがあることを理解してもらった」
と感じることで受容の感覚につながることになります) etc.
3.目標の共有に向けて・・・
「ここで相談することに対して、どのような期待がありますか?」
「(お母さんの期待とは違うかもしれないけれど)ここでは○○のような教育相談ができます」
「一緒に○○していきたいと思うのですが、どう思われますか?」
4.今後の相談について・・・
初回相談の終了時までに、アセスメントが確実なものとなることは難しいかもしれませんが、おおまかな今後の支援について・・・
次回の相談をいつにするか?
どの程度の頻度で継続していくか?
担当者が誰になるか?
支援のポイントはどこか?
等の見通しを保護者に伝えて‥・
子どもへの支援(カウンセリング、トレーニングetc.)
保護者への支援(ガイダンス、アドバイス、カウンセリングetc.)
親子関係への支援(アドバイス、カウンセリングetc.)
環境の調整(コンサルテーション、コーディネーションetc.)
等、今後の方針を決めます。 <場合によって>
*これらの方針は、初回面接後のケース会議で検討した後、保護者に伝えることもあります。
<注意>
*他機関での相談・支援の方が適切であると判断された場合、この段階でそのことを伝える必要がある場合も少なくありません。相談担当者個人の能力ではなく、担当者が所属する機関が全体として対応可能なのかどうかを見極めることもアセスメントの一つの重要な作業です。相談者にとって最も有益な相談・支援が可能な機関を紹介する必要があるでしょう。
「沈黙」はとても大切」
*面接中に相談者が沈黙してしまうと、担当者の方がどうしても沈黙に耐えられず話をしてしまいがちですが、沈黙は相談者が自分自身の心と対話している時ですから、担当者は邪魔をしないようにしましょう(もちろん、相談者の緊張や不安が強くて沈黙している時には、話しかけることも必要です)。
「信じること」を巡るエピソード!」
*教育相談の初期段階では、「信頼すること」に関するさまざまなエピソードが語られます。人を信じて裏切られたエピソードや迷いや恐れを感じたエピソード、以前に新しいことを始めた時のエピソードなどが語られることが多くみられます。このように教育相談を始めるにあたっては、相談者側も担当者が信頼に足るかどうかアセスメントしていることを忘れてはいけません。相談者の気持ちの揺れ動きを感じ取る感受性が担当者には求められます。
「席を外すこと」は禁忌
*担当者が面接の途中で席を立つことは可能な限り止めましょう。担当者に「置き去りにされた」「見捨てられた」「呆れられた」などの不信や不安を掻き立てます。また時間の変更等に関しても「会いたくないのではないか」「迷惑なのではないか」等の不安を生じることがありますので、できるだけ約束は守りましょう。特に初回面接は日程変更が生じる恐れのない時間を設定しましょう。
「柔軟な視点と姿勢」
*アセスメントは複数の視点から行い、仮説や予測は複数ある方が良いでしょう。時には諸検査や医療的な観点からのアセスメントも必要となります。また、初回面接で立てた仮説や予測は、教育相談・支援が進む中でどんどん変わっていくものです。そうした問題に対する柔軟な視点や姿勢をモデルとして、相談者も柔軟に問題に取り組むことができるようになるでしょう。